バイクその他

バイクの中身と設計者の憂鬱

バイクを設計する視点でみたら

どうも設計にいたときのイヤ~な経験からなのか、バイクの外側を外し中身を見ている時に、憂鬱な気分になる時があります。
いつもそれを連想させるのが、開けた時にふと見る、、こういう内部の作り・・

RV125メットインのスペースを外したところ

メットインを外したバイク

大きなメットイン を外した中身です。

まあ、関係ない人には、なんてこと無いふつうといえば普通
でも、作る立場で見てしまうと、変なところに注目してしまう。

写真ではわかりにくいですが、あれこれと、キャブレターやパイプ類を横にして頭を下げ、背を低くする工夫がされています。

ホース類は上部でなく、側面から。。ほかもフレームと干渉を避けて、いろいろと位置ずらしたんだろうなぁ・・・
いろいろとメットインを大きくするために手間暇かけたあとがわかっちゃう。。

 

作る側の視点

工夫して作られるのが普通なんですが。。作るという設計の視点で見ると
(別にバイクの設計してたというわけではないですが、設計開発の部署の人は似たような体験してると思う)

det-metin2

設計者の立場でスペックを見る

使う人は、使いやすい、乗りやすい、利便性がいいバイクがいいに決まっている
そういう方向に改良、モデルチェンジする場合 通常、設計ではスペックが先に来ます

例えば仮に、平たく ありそうな話で例えると

次の新型は

  • メットイン容量 2倍でいく!」
    そして、
  • 足つきよく、シート高は 20mmダウンだ!
  • 走行性も上げ タイヤは13インチから 14インチにする!

こんな開発目標でスペックが決まったとします。

メットインは大きいほうが使いやすいにこしたことない

メットインBOX

話し聞いたら、使いやすくなると思うでしょう??

設計の板挟み

ところが設計にしてみたら
シート下の メットインのスペースが2倍・・・

メットイン大きくしたらいい と・・上にメットイン高さを上げれば・・・

しかし! 高さを上げれるどころが、シート高2cmダウンでシートが下がって圧迫してくる、高さを上げるどころか、下げなきゃ
しかも、下からは、タイヤの径がアップして、せり出して来てメットインスペースを圧迫

全部大変なことばっか(トホホ) メットイン設計担当は地獄・・・

作る人=設計が改良箇所を決めたら話は早いんですが、、すると、作り易いもんばっかり作るので、通常 設計担当の外側で決まる

上からシート、下からタイヤ とハサミ打ちにされ
しかも、ハサまれたメットインは容量を大きく上げねばならぬ・・

横に広げるしかない  さあ、ここで横の場所をどう取るか?
横には、電気ボックス類、干渉するパイプ類 タンク等々
メットインBOX拡張でぶつかる電気BOX類やホース類を小さく、またはかわして広げるしか無い。。

各担当に個別な話にすると、、電気、エンジン、吸気担当にそれぞれまともに聞いても「うちのところはもういっぱいだよ 譲っても2割ぐらい」とか言うに決まってます(^^;

組織のサラリーマンの悲哀

ここで、マネージメントがちゃんとしてて、それぞれの担当に相応の負担を割り振ってバランスよく 新型スペックがメデタく実現できたらいいんですが、、

私の経験した部署では 各担当者の押し合いと課長のねじ込みで決まってました(^^;

そうなると、立場の弱いものに負担が行く

どう割り当てて品質を維持して作るか、マネージメントの威力が発揮されるところですが、
課長と名の付く人間はたいがい口うるさいものだ (ドラマの中の名言)
理不尽なことも、あれこれと怒鳴ってねじ込んでくる

まあ、人の組織にいれば大なり小なり経験があったり、そうそう! と身近に感じる人も多いことでしょう(^^
(のんきに行末にマイルマークつけてんじゃねぇ その真っただ中だ と身につまされる人がいたりするのが世の常)
(バイクや車ほどの量産機になれば、無理を押した開発で販売後に欠陥となればかえって損害が大きいので、もっとずっと管理体制はしっかりしているとは思います)

こういう思い出話ですが、実際 あまりの重荷に、連日 夜中までだれもいないオフィスに一人残りながら、
いい加減 反撃しよう と
この潰されそうな内容、いいかげんにしてくれ、どこまでどう自分で背負うべきか、この管理手法を含め、上に全部話しを持って行って、現状を説明し適切に決め、裁いてもらおう と準備をしていました。
実際には、発動することなくすみました。

振り返って、やれるべきこと

グチみたいなことばかりで終わらずに あるときふと思ったこと

振り返ると

”あなたの人生の経験にはすべて意味がある” 

という言葉の意味がわかりはじめたことがある。

快適なことばかり、ひどい経験もなく、50才になったら。。
イヤなやつに出会わず人生を終わった人なんていないでしょう。もし50才で嫌な人と初めて過ごすことになったら。。。

当時を思い返すと、大変な状況で、悔しい思いを抱えながらも、適切に言うべきところはいろいろあったと思う。

自分の状況を冷静に説明し、状況を伝え、行き詰まりを理解してもらう。自分の気持ちも冷静に伝える 等々

理解されないなら、キれてゴリ押しではなく、理解されるための方法を考えるのも解決案の1つ。
無理ばかり続くとわかれば自分のために潔くやめるのも1つ。

悔しい思いの人は、やるべきことをやっているからくやしい、

そして悔しい相手には、やるべきことをズルくやっていないと思うから悔しさが募る。

でも反対に、やるべきことをやっているから、どうどうと主張できるし、するものはすべき。
結果はダメでも、やり尽くしたぶん あきらめも受け入れられる。

swngArm1

こういう作り手の側がわかるようなところでふと連想してしまう当時のことは
対決する準備はあったが、その前にきちんと説明し主張して、理解されようと頑張るのもやるべきことの1つだったと。

人間 成長と共に、そういうことを学んでいくものですが、悪い思い出もそのためのきっかけかもと思えることが多ければ、きっと、ずっと成長している。

今、悩んでいるまっただ中なら、それは 停滞しているようで前進している印
-自分では自覚なく、気づかないが。

いろんな人に出会うと、やはり 自分の舞台でもまれ、乗り越えた人は、雰囲気で感じる 深みがある。
乗り越えれずに人間が曲がってしまうこともある、でも曲がったらまた元に、まっすぐに戻せばいい。

一度曲がりまっすぐにしたものは、最初からまっすぐのものにはない直線になる。
自分の舞台と思えるものが振り返って1つも無かったらやっぱり寂しい、回り道もせず、まっすぐ家に帰り続けた人生の方が寂しい気がする。

されど、この世は難しい

ふと さっきのスペック要求が急に下がったとして

「次の新型は

  • メットイン容量 やっぱり 2倍→ 1.5倍にしとく」
    そして、
  • シート高は 下げない
  • タイヤは13インチから やっぱり変えない

あ~ 楽になった! と作り手は思って、新型がめでたく完成!

すると  同時期に新型発売の他社

比較すると うちのより

  • メットイン容量 1.5倍
  • 足つき、シート高 3cmダウン
  • タイヤ 14インチ

うちの新型は この他社の影にかくれ、完全にうもれている・・・設計は楽だったけど・・・

せっかく作った新型で、こんなのもいやだ!

とかくこの世はむずかしい・・

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